妊娠や性行為に関連して、安全日や危険日などの言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
安全日や危険日は排卵日から予測ができ、安全日は妊娠しにくく、危険日は妊娠しやすい日であるとされています。
しかし、安全日だからといって100%妊娠しないわけではないため、妊娠を望んでいない方は注意が必要です。
今回は、排卵日を知る方法や安全日・危険日について解説します。安全な避妊方法も併せて解説するため、妊娠したくない方はぜひ参考にしてください。
排卵日とは?妊娠したくない場合は?
妊娠は卵子の有無に左右されるため、妊娠したくない場合は排卵日を予測すれば、そこから安全日が推測できます。
ここでは、排卵日について詳しく解説します。
排卵日は妊娠の確率が高くなる
排卵日とは、成熟した卵子が卵巣から飛び出す現象(排卵)が発生する日のことです。
受精には卵子と精子が必要となりますが、卵子は女性の卵巣内にある卵胞で生まれ、成長します。
卵子は十分に成熟すると卵胞を破って卵巣外に飛び出しますが、これが排卵と呼ばれる現象です。
排卵された卵子が精子と出会うことで受精卵となり、さらに受精卵が子宮内膜に潜り込むと着床となって、妊娠が成立します。
そのため、排卵日には妊娠の確率が高くなります。反対に、胎内に卵子がない状態であれば性行為をしても妊娠しません。
安全日・危険日の管理が大切
排卵後に妊娠が成立しなかった場合は、再び新しい卵子の成長が始まります。そして、排卵は約1か月のサイクルで繰り返されます。
このサイクルを生理周期と呼びますが、この生理周期のうち妊娠の確率が低い日を安全日、妊娠の確率が高い人を危険日と呼ぶことも多いです。
とくに排卵前の数日は妊娠の確率が高く、危険日とされます。一方、生理の直後は妊娠の確率が低く、安全日と言われることが多いです。
安全日や危険日は明確な身体の変化があるわけではないため自覚は難しいですが、後述するいくつかの方法で予測ができます。
妊娠を望まない場合には、安全日や危険日を予測して妊娠の確率を下げることが大切です。反対に、妊娠を望む場合にも危険日を予測すれば確率を上げられます。
ただし、安全日や危険日の予測は難しく、あくまでも目安です。医学的には、確実に妊娠しない日は存在しないとされています。
4段階の生理周期と体に起こる変化
排卵日は生理周期に基づいて予測できるため、まずは自身の生理周期を知ることが重要です。女性の生理周期は4段階に分かれており、それぞれ体に起こる変化が異なります。
ここでは、4段階の生理周期と体に起こる変化について解説します。
月経期
月経期は、生理が起こる時期です。
排卵後、胎内では着床に備えて子宮内膜が厚くなりますが、妊娠が成立しなかった場合は厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに排出されます。これが生理です。
月経期の長さには個人差がありますが、一般的には3~7日ほどの期間です。
月経期には黄体ホルモンや卵胞ホルモンの量が減少するため、生理周期のうちで最も妊娠の確率が低い時期であると言えます。
また、月経期には子宮を収縮させるための生理活性物質が分泌されますが、これは発痛作用を持つため、人によって月経痛(生理痛)が引き起こされます。
心身ともに不調をきたしやすい時期であるため、できる限りリラックスして安静に過ごすことが大切です。
卵胞期
卵胞期は、新しい卵子を育て妊娠の準備をする時期です。増殖期と呼ばれる場合もあります。
月経が終わると卵胞刺激ホルモンの分泌量が増加し、卵子の成長が始まります。生長期間は一般的に13~14日ほどで、生理周期の中で最も長いです。
また、卵子の成長とともに卵胞ホルモンの分泌量が増加し、これにより子宮内膜も徐々に厚みを増していきます。
月経期とは対照的に、卵胞期は心身が安定しやすい時期です。肌や髪の調子がよくなり、落ち着いた気持ちで過ごせます。
なお、加齢とともに閉経が近づくと、卵胞期が短くなる傾向があります。
排卵期
排卵期は、成熟した卵子が卵胞を飛び出す時期です。
卵子の成熟に伴って卵胞ホルモンの分泌量が増加しますが、一定以上に増えると卵胞刺激ホルモンと黄体ホルモンの分泌量が急激に増加し、排卵が始まります。
排卵が起こるのは、これらのホルモンの急激な増加から約16~32時間後とされています。これが排卵期であり、生理周期の中で最も短い期間です。
このように排卵は急激なホルモン量の変化を伴うため、排卵日の周辺ではさまざまな体調不良が生じます。
下腹部の痛みや倦怠感、冷えやむくみなどの症状が生じやすいため、排卵期には休息をきちんととって体調不良に備えましょう。
黄体期
黄体期は、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなる時期です。
受精卵が子宮内膜に潜り込むこと(着床)によって妊娠が成立しますが、着床のためには厚く柔らかい子宮内膜が必要です。
そのため、排卵後は受精卵を受け入れるために子宮内膜を厚くし、妊娠の準備が進められます。また、受精卵のための水分や栄養素も子宮内膜に蓄積されます。
黄体期の一般的な期間は、約14日です。この期間内に妊娠しなかった場合は月経期に移行して生理が始まり、厚くなった子宮内膜が排出されます。
黄体期には、ホルモンの影響で頭痛や腰痛、便秘やニキビなどの体調不良に悩まされることも多いです。また、不眠やイライラなどの精神的な不調も現れます。
そのため、あまり無理をせずにリラックスして過ごしましょう。
排卵日(危険日)の計算・予測方法
排卵日は、いくつかの方法で予測が可能です。それぞれ精度やメリット・デメリットが異なるため、目的に適した方法で予測しましょう。
ここでは、排卵日(危険日)の計算・予測方法を3つ紹介します。
オギノ式
オギノ式は、日本の産婦人科医である荻野久作が1924年に発見した排卵日の予測方法です。
生理周期に基づいた簡単な計算で予測するため、誰でも気軽に予測できる方法として現在でも支持されています。
計算方法は、生理周期全体の日数から黄体期の日数である14日を引くことで、生理予定日から排卵日までの日数を算出するというものです。
たとえば生理周期が30日の方であれば、14を引いた16日が生理予定日から排卵日までの日数となります。なお、ズレを考慮して前後5日間が排卵日とされます。
このように簡単に予測できる反面、精度はそれほど高くありません。生理周期が不安定な方はとくに予測が難しく、予測が大きく外れる可能性もあります。
(参照元:【医師監修】排卵日を予測する方法とは?オギノ式について|エレビットの葉酸サプリは根拠がある葉酸800μg+|バイエル薬品)
体温計測
体温計測は、最もポピュラーな排卵日の予測方法です。
女性の体温は女性ホルモンの分泌量によって微妙に変化しています。とくに排卵後に分泌される黄体ホルモンには、体温を上昇させる作用があります。
健康な女性であれば、生理周期のうち月経期や卵胞期は体温が比較的低く、排卵後の黄体期は体温が比較的高いです。
そのため、毎日基礎体温を計測すれば排卵日の予測ができます。
基礎体温とは安静状態の体温であり、起床してすぐ横になった状態で婦人体温計を使用すれば計測できます。
計測した体温は基礎体温表に記録しましょう。また、現在は基礎体温の記録と排卵期・月経期の予測ができるアプリも配信されています。
計測の結果、低温期と高温期の周期がわかれば、低温期から高温期に移行する数日のうちに排卵日があると予測できます。
ただし、この方法は排卵日をピンポイントで予測するものではなく、さまざまな要因で予測が外れる可能性があるため気を付けましょう。
排卵検査法
排卵検査法は、尿に含まれる黄体形成ホルモンの量を計測し、排卵日を予測する方法です。
黄体形成ホルモンとは排卵を命令するホルモンであり、排卵の36~48時間前に大量に分泌されます。
黄体形成ホルモンの急激な増加を「LHサージ」と呼び、これを捉えることで約1日前に排卵日を把握できます。
排卵日検査薬はドラングストアでの購入も可能です。ただし、第一類医薬品に分類されるため、購入の際には薬剤師の説明を受ける必要があります。
お金はかかりますが、検査からすぐに結果が出て、具体的な排卵日を簡単に把握できるため便利です。
ただし、月経不順の方は排卵日の予測ができない可能性もあるため気を付けましょう。
望まない妊娠を防ぐ方法
妊娠を望んでいない場合は、排卵日を予測して危険日を避けるのみでなく、他の避妊方法も併せて使用しましょう。
ここでは、望まない妊娠を防ぐ方法を4つ紹介します。
正しく避妊をおこなう
望まない妊娠を防ぐためには、正しい方法で避妊をおこなうことが何より大切です。
コンドームは安価で簡単に入手できる最もポピュラーな避妊方法ですが、正しく使用しなければ避妊率が低くなります。
購入の際は品質が信頼できるものを購入し、傷や劣化がないよう気を付けて保管しましょう。品質保証期間内に使用することも重要です。
使用の際は表裏に注意し、必ず陰茎を挿入する前に装着しましょう。射精の前であっても陰茎から精子が漏れるため、射精時に装着すればよいわけではありません。
ピルを服用する
低用量ピルは女性ホルモンを配合した錠剤であり、毎日決まった時間に服用すれば排卵を抑制する効果が得られます。
毎日正しく服用できていれば、コンドームよりも高い確率で妊娠を回避できます。また、女性主体で避妊できる点や、生理痛やPMSなどに効果がある点もメリットです。
飲み忘れると避妊率が下がるため、気を付けましょう。また、ピルのみでは性感染症の予防はできないため、コンドームとの併用がおすすめです。
排卵日を避けて性行為をする
排卵日が予測できている場合は、その日を避けて性行為をすれば妊娠の確率を下げられます。
オギノ式や体温計測による排卵日予測はお金もかからないため、誰でも使用できる方法です。
ただし、月経不順の方は排卵日の予測が難しい点や、体温計測は毎日おこなう必要がある点などはデメリットと言えます。
また、排卵日の確実な予測が難しい点にも注意が必要です。目安としての安全日や危険日はありますが、確実に妊娠しない日は存在しません。
そのため、安全日と予測できるときでも、妊娠を望まない場合は必ず他の方法で避妊をしましょう。
コンドームやピルによる避妊率も100%ではないため、排卵日を避ける避妊方法はあくまでも保険と考えることが大切です。
ミレーナの装着
ミレーナは子宮内に装着するタイプの避妊薬で、一般的には避妊リングとも呼ばれています。
装着すれば黄体ホルモンが持続的に放出され、これによって避妊効果が得られます。また、生理痛や過多月経などの症状にも効果的です。
5年間は持続的に避妊効果が得られるため、ピルを5年間服用する場合と比べると非常に安く済みます。また、飲み忘れの心配がない点もメリットです。
ただし、未産婦の方や子宮口が狭い方には使用できない場合もあります。
避妊に関する注意点
避妊に関しては誤った俗説も多いため、それに惑わされず正しい方法で避妊することが大切です。
ここでは、避妊に関する注意点を紹介します。
精子の寿命は3日前ある
精子の寿命は約3日とされています。この3日間のうちに卵子と出会えれば、受精卵となります。
一方、排卵された卵子の寿命は約24時間です。こちらも、排卵から24時間のうちに精子と出会えれば受精が可能です。
排卵日をもとに安全日や危険日を予測する方法は、これらの精子や卵子の寿命を考慮に入れて作られています。
ただし、精子の寿命は長ければ7日間にもなります。精子の生命力や膣内環境などによって精子の寿命は変動するため、注意が必要です。
安全日だから妊娠しないとは限らない
上述のように、排卵日から安全日を予測してその日に性行為をすれば、妊娠の確率を下げられます。ただし、安全日であれば必ず妊娠しないというわけではありません。
排卵日は女性ホルモンによって決まりますが、女性ホルモンの分泌は体調やストレスなどさまざまな要因で変化します。
そのため排卵日も変動しやすく、ピンポイントな排卵日の予測は困難です。
安全日でも、避妊せずに性行為をすれば妊娠の可能性があります。妊娠を望まない場合は、安全日や危険日にかかわらず必ず避妊をしましょう。
正しい避妊方法を知っておく
望まない妊娠を防ぐためには、正しい方法で避妊をおこなうことが大切です。
「膣外射精であれば妊娠しない」、「性行為後に膣を洗えば妊娠しない」などの考えもありますが、いずれも誤りで、妊娠の可能性があります。
また、膣外射精が避妊にならないのと同様に、射精の直前にコンドームを装着する方法も避妊にはなりません。
コンドームは誤った使い方をされることが多いため、メーカーが推奨する使用方法を確認して正しく使用しましょう。
避妊に失敗した場合はアフターピルを服用
避妊に失敗して妊娠の可能性があるときは、アフターピルを服用しましょう。アフターピルは性行為後に服用して妊娠を回避する薬剤で、緊急避妊薬とも呼ばれます。
事後的な避妊が可能であり、避妊率も高いため、避妊に失敗した際の心強い味方です。
ただし、性行為から時間が経過するにしたがって避妊率が大きく下がるため、避妊に失敗したときは迅速に服用する必要があります。
万が一の場合に備えて、アフターピルを手元に用意するのもおすすめです。
妊娠に関するよくある質問
最後に、妊娠に関するよくある質問に回答します。
アフターピルの避妊成功率は?
アフターピルにはいくつかの種類があり、それぞれ避妊率も異なりますが、性行為から時間が経過するほど避妊率が低くなる点は同じです。
たとえば、日本で主流なアフターピルの「ノルレボ」の避妊率は、性行為から24時間以内の服用で95%ですが、72時間以上経過すると約60%まで低下します。
望まない妊娠を防ぐために、アフターピルは一刻も早く服用するよう心がけましょう。
アフターピルは薬局で購入できる?
アフターピルの購入には処方箋が必須であるため、薬局やドラッグストアでの市販はありません。
そのため、必要になった際は病院やクリニックの受診が必要になります。通院が難しい場合は、オンラインクリニックがおすすめです。
ネット通販で海外のアフターピルを購入できる場合もありますが、安全性や効果などの点でリスクが大きいため避けましょう。
膣外射精では妊娠しない?
膣外射精(射精の直前に陰茎を抜き出し膣外で射精する行為)によって避妊できると考えている方も多いですが、膣外射精は避妊にはなりません。
性行為時、陰茎からは射精前にカウパー液が分泌されますが、このカウパー液にも少量の精子が含まれています。
そのため、射精時に陰茎が膣外にあったとしても、それ以前のカウパー液に含まれる精子で妊娠する可能性があります。
妊娠を望まない場合は、コンドームを装着しましょう。
まとめ
今回は、排卵日の予測方法や安全日・危険日について解説しました。
排卵日の予測には、オギノ式や体温計測、排卵検査法などの方法が有効です。しかし、いずれもデメリットがあるため、いくつかの方法を併用してより精確に予測しましょう。
また、排卵日がわかれば安全日や危険日も算出できます。しかし、安全日はあくまでも妊娠しにくい日であり、必ず妊娠しない日ではありません。
妊娠を望んでいない場合は、安全日だからといって避妊なしで性行為をせず、必ず正しい方法で避妊をおこないましょう。