迅速な服用が重要であり、妊娠リスクのある性交後から時間が経過するとともに避妊効果は低下します。
アフターピルの処方はクリニックでの対面診療やオンライン診療などの選択肢があるものの、薬局やドラックストアで購入できるのでしょうか。
自宅の近くにある薬局で購入できれば、クリニックでの対面診療やオンライン診療よりも早い段階で服用できます。
本記事では、薬局やドラックストアのアフターピルの取り扱い事情について解説します。
アフターピルについての知識を深めたい方や、どのような場所で購入すればよいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
アフターピル(緊急避妊薬)とは
アフターピル(緊急避妊薬)とは、妊娠リスクのある性交後に服用する緊急用のピルです。
強要されて避妊せずに性行為をした場合や、コンドームが破れたり外れたりして避妊に失敗した場合などに服用します。
モーニングアフターピルや緊急避妊ピル、事後避妊薬などとも呼ばれていますが、一般的な呼び方はアフターピルです。
アフターピルは妊娠した可能性のある性交後から、早く服用するほど高い避妊効果が得られます。
そのため、避妊せずに性行為をした場合や避妊に失敗した場合は、気づいた時点での服用が大切です。
ここからは、アフターピルの効果と種類、服用方法について解説します。
購入する方法を知る前に、アフターピルの基本的な知識を身に付けましょう。
アフターピルの効果
アフターピルで妊娠リスクを下がられるのは、排卵の抑制と着床の阻害効果が主な理由です。
アフターピルには5~7日間にわたり排卵を抑制する作用があり、精子と卵子が出会うのを防ぎます。
排卵しなければ受精そのものがおこなわれないため、妊娠は成立しません。
また、排卵日付近に性行為をしてすでに受精した場合でも、着床を阻害する作用により避妊効果が期待できます。
着床とは子宮に到着した受精卵が子宮内膜に潜り込む現象のことで、妊娠の成立を意味するものです。
排卵日付近の性交後にアフターピルを服用しても、決して意味がないわけではありません。
排卵の抑制と着床の阻害効果により、アフターピルは高い避妊効果を実現しています。
アフターピルの種類
アフターピルと一括りにしても、いくつかの種類があります。
- ノルレボ、レボノルゲストレル錠:72時間用
- プラノバール錠(ヤッペ法):72時間用
- エラ、エラワン:120時間用
ノルレボ錠は、性交後72時間以内に服用すれば約85%の避妊効果が得られる薬です。
吐き気や頭痛などの副作用も少なく、日本国内では主流のアフターピルになりつつあります。
レボノルゲストレル錠はノルレボ錠のジェネリック医薬品のため、基本的な効果や副作用は変わりません。
一方、プラノバール錠は生理日移動や月経困難症の改善などで用いられる中容量ピルですが、アフターピルとしても使用されています。
プラノバール錠を用いた避妊法はヤッペ法と呼ばれ、低価格で購入できるものの副作用が起こりやすく、ほかのアフターピルと比べて妊娠阻止率が低い傾向です。
エラやエラワンは有効時間が120時間と長く、何らかの事情で性交から時間が経過している方に用いられます。
近年、プラノバール錠を用いるクリニックは減少傾向にあり、72時間用のレボノルゲストレルまたは120時間用のエラを取り扱うところが大半です。
アフターピルの服用方法
アフターピルの服用方法は、種類により異なります。
- ノルレボ、レボノルゲストレル錠:性交から72時間以内に1錠服用
- プラノバール錠(ヤッペ法):性交から72時間以内に2錠、その12時間後に2錠服用
- エラ、エラワン:性交から120時間以内に1錠服用
いずれの種類でも性交から時間が経過するとともに避妊成功率は下がるため、可能であれば24時間以内の服用が望ましいといえます。
たとえば、レボノルゲストレル錠を性交から24時間以内に服用した場合、妊娠阻止率は約98%です。
72時間以内、もしくは120時間以内に服用すればよいと考えず、できる限り早く飲みましょう。
アフターピル(緊急避妊薬)は薬局やドラッグストアで購入できる?
アフターピルは、薬局やドラックストアでも購入可能です。
厚生労働省は、2023年6月26日に対象の薬局での販売を許可しています。
ただし、薬局での販売にはいくつかの条件があるため、すべての店舗で購入できるわけではありません。
ここからは、薬局で販売できる条件と今後のアフターピル処方について解説します。
医師が発行した処方箋があれば一部の薬局で購入できる
アフターピルは、次の条件を満たした薬局のみ販売できます。
- 研修を受けた薬剤師のみ販売
- 夜間や土日祝日の対応が可能
- 近くのクリニックと連携が可能
- 個室などでプライバシーを確保している
上記の条件を満たしていれば、医師が発行した処方箋は必要ありません。
ただし、薬局のなかには医師が発行した処方箋を必要としているところもあるため、事前の確認が必要です。
今後は処方箋がなくても薬局で購入できるようになる?
厚生労働省は一部の薬局に処方箋なしのアフターピル処方を許可していますが、今後どうなるかはわかりません。
薬局での販売は試験的におこなわれており、試験運用は2024年の3月までと定められています。
アフターピルはインターネットでの販売や悪用、乱用などが懸念されているため、全面的な薬局での販売が実現するのは時間がかかるでしょう。
アフターピル(緊急避妊薬)の購入方法
アフターピルは一部の薬局でのみ取り扱われているため、自宅の近くで購入できない場合もあるでしょう。
自宅付近の薬局がアフターピルの処方に対応していない場合は、クリニックでの対面診療またはオンライン診療の2つの選択肢があります。
どちらもメリットとデメリットがあるため、それぞれを比較して自身に適した診療形態を選びましょう。
ここからは、アフターピルの購入方法について解説します。
医療機関で対面診療を受ける
一つ目の選択肢は、医療機関で対面診療を受けてアフターピルを購入する方法です。
診療後は当日にピルを受け取れるため、性行為から時間が経過している場合に適しています。
しかし、クリニックに行く手間がかかるほか、待ち時間などが長くなりやすい点がデメリットです。
クリニックのオンライン診療を受ける
二つ目の選択肢は、クリニックのオンライン診療を受けてアフターピルを購入する方法です。
診察から処方までオンライン上で完結するため、クリニックに行く手間や時間がかかりません。
ただし、ピルが届くのは翌日になるケースが多いことから、すでに時間が経過している方は注意が必要です。
アフターピル(緊急避妊薬)を購入できるオンラインクリニック3選
医療機関での対面診療は安心感がある反面、来院する手間や時間がかかる点がデメリットです。
とくに仕事や家事、学校などで忙しい方の場合は、オンラインクリニックをおすすめします。
オンライン診療はスマートフォンやパソコン1台で診察から処方まで完結するため、クリニックに行く手間や時間がかかりません。
しかし、近年ではオンラインクリニックも増加しており、どのようなところを選べばよいのか迷う方も多いでしょう。
ここからは、アフターピルの購入におすすめのオンラインクリニックを3院紹介します。
それぞれ特徴や魅力が異なるので、ぜひ比較しながら自身に適したクリニックを見つけてみてください。
エニピル
エニピルは24時間いつでも診療に対応しており、最短翌日にピルが届くオンライン診療サイトです。
避妊の失敗に気づいた時点で診察が受けられるため、急を要するアフターピルの購入に適しています。
また、アフターピルを服用するにあたり疑問が生じた場合でも、LINEで無料相談が可能です。
エニピルでは、72時間用のレボノルゲストレルと120時間用のエラの2種類を用意しています。
ソクピル
ソクピルは、アフターピル処方が専門のオンライン診療サービスです。
24時間いつでも診察が受けられるほか、日本全国で即日発送に対応しています。
最短5分でアフターピルの処方が受けられるため、急いでいる方でも安心です。
ソクピルでは、72時間用のレボノルゲストレルと120時間用のエラの2種類を用意しています。
フィットクリニック
フィットクリニックは、5~10分の音声通話のみでアフターピルの処方に対応しているクリニックです。
通話のみの診察で済むため、医師と顔を合わせる必要がない点は大きなメリットといえます。
当日発送にも対応しているほか、アフターピルだとわからない状態で配送されるなど、患者への配慮も行き届いています。
フィットクリニックで取り扱いのあるアフターピルは、72時間用のレボノルゲストレルと120時間用のエラの2種類です。
オンライン診療の流れ
オンライン診療は近年普及してきたサービスのため、具体的な流れがわからない方も多いでしょう。
具体的な診療の進め方を知れば、オンライン診療をスムーズに受けられます。
ここからは、オンライン診療の流れを3ステップで解説します。
ただし、クリニックにより進め方は異なることから、参考程度に見てみてください。
1:予約・問診
まずは電話やWeb、専用アプリなどから診察の予約をします。
アフターピルは早く服用するほど高い避妊効果が得られるため、なるべく当日に診察を予約しましょう。
ただし、クリニックのなかには初回のオンライン診療に対応していないこところがあります。
初診は対面診療になるクリニックもあることから、すべてオンラインで完結するところを選ぶとよいでしょう。
予約が出来たら、Webや専用アプリで問診票を記入します。
問診票に記入した内容は医師が診察する際に必要となるデータのため、間違いのないように正しく記入しましょう。
また、自身の症状や悩みなども正確に記入すれば、アフターピルの処方以外の目的でクリニックを利用する際にも役立ちます。
2:医師による診察
問診票の記入後、予約した日時になるとオンライン上で医師による診察がおこなわれます。
アフターピルの処方を受ける際に聞かれるのは、性交履歴や妊娠リスクのある性交をした日時、最終生理日、ピルの服用歴、服用中の薬などです。
すべてアフターピルを服用するにあたり必要な情報のため、正確に伝えることが大切です。
また、デリケートな悩みを抱えている場合は、オンライン診療の際に相談してみるとよいでしょう。
アフターピルの処方以外に、自身の症状や悩みなどに適した薬が提案される可能性もあります。
3:アフターピルの郵送
診察して支払いが完了したら、アフターピルが自宅に郵送されます。
クリニックによるものの、クレジットカード決済や銀行振込、電子決済などが主な支払い方法です。
決済した時間により当日発送に対応しているクリニックもあるため、なるべく早く支払いましょう。
当日に発送された場合、アフターピルは最短で翌日に届きます。
アフターピルが手元に届いたら、すぐに服用できるとよいでしょう。
ただし、事故や渋滞、宅急便の都合、天候などにより配送が遅れるケースも珍しくありません。
アフターピルの有効時間内に服用できそうにない場合は、対面診療のクリニックを受診してアフターピルの処方を受けましょう。
アフターピル(緊急避妊薬)に関するよくある質問
アフターピルに関して、よくわからないことがある方も多いでしょう。
疑問や不安を抱いている方のために、アフターピルに関するよくある質問を4つ紹介します。
その他にもわからないことがある方は、クリニックの医師に相談しましょう。
アフターピルに副作用はある?
アフターピルは有効時間内の服用で高い避妊効果が得られる薬ですが、副作用が生じる場合もあります。
アフターピルの代表的な副作用は、次のとおりです。
- 吐き気や嘔吐
- 頭痛
- 肌荒れ
- 乳房の張りや痛み
- 少量の出血
- 倦怠感
とくに吐き気や嘔吐は、アフターピルの服用で報告されることの多い副作用です。
また、体内にアフターピルが吸収されるまで2~3時間はかかるため、服用後に嘔吐すると体内に成分が流れ出て、避妊に失敗する可能性があります。
薬の内服後に嘔吐した経験がある方や、心配な方は吐き気止めの処方を受けるとよいでしょう。
とはいうものの、服用後に吐き気を感じても嘔吐に至るケースは少ないことから、過度に心配する必要はありません。
さらに、いずれの副作用も一時的なものであり、大半の場合は24時間以内に治まります。
ただし、副作用が長引いたり強くでたりする場合は、放置せず医師に相談しましょう。
個人輸入でアフターピルを購入しても大丈夫?
個人輸入でアフターピルを購入するのは、安全性や品質の観点から推奨できません。
通販サイトのなかには個人輸入の商品を取り扱うところもありますが、そもそも違法行為です。
さらに、アフターピルが自宅に到着するまで時間がかかるほか、医師から服用による注意点が説明されるわけでもありません。
服用後のアフターフォローも受けられず、万が一トラブルが起きた場合でも自己責任となります。
体に悪影響がないとしても、正しい避妊効果が得られるとは限りません。
個人輸入でアフターピルを購入するのは利点がないため、通販サイトやSNSなどでの入手は避けましょう。
アフターピルはクリニックでの対面診療またはオンライン診療、薬局などで処方を受けるべきです。
通販サイトでアフターピルを購入できる?
アフターピルは一部の通販サイトでも購入できますが、安全性や到着までにかかる時間などの理由から避けることをおすすめします。
基本的に通販サイトは個人輸入代行の形でアフターピルを販売しており、なかには偽造医薬品や粗悪品が出回っている場合もあり危険です。
実際に厚生労働省は、医薬品の個人輸入や輸入代行などに対して注意喚起をしています。
アフターピルの個人輸入自体は違法ではないものの、健康被害を及ぼす可能性があるため避けた方がよいでしょう。
また、通販サイトの場合は偽薬で避妊効果が得られない、自宅に届くまで時間がかかるなどのリスクもある点がデメリットです。
アフターピルは性交後から時間が経過するとともに避妊効果が下がる薬のため、到着が遅れる可能性のある通販サイトは推奨できません。
さまざまな理由から通販サイトでの購入は避け、クリニックや薬局で処方を受けるようにしましょう。
男性でもオンライン診療を受けたらアフターピルを購入できる?
オンライン診療に限らず、男性はアフターピルを購入できません。
そもそもアフターピルは本人以外に処方できないため、服用予定の女性自身が購入する必要があります。
また、男性が女性にアフターピルの服用を強要する可能性がある点も理由の一つです。
当事者意識から男性の立場でも女性の代わりに購入したいと考えるのはよいことですが、さまざまな理由から本人以外はアフターピルの処方を受けられません。
しかし、クリニックのなかには、服用する本人と一緒に男性も同席してよいところがあります。
パートナーである女性に付き添いたいと考える場合は、男性も同席できるクリニックを選ぶとよいでしょう。
まとめ
アフターピルは、条件を満たした薬局やドラックストアであれば購入可能です。
しかし、薬局での販売は試験的におこなわれているため、今後どうなるかはわかりません。
アフターピルの処方は、クリニックの対面診療やオンライン診療などの選択肢もあります。
それぞれにメリットやデメリットがあるものの、アフターピルにおいて大切なことは早く服用することです。
自身に適した診療形態を選びつつ、できる限り早く服用しましょう。