妊娠中のカフェイン摂取が大丈夫なのかどうか、気になる方も多いのではないでしょうか。
カフェインはコーヒーや緑茶をはじめ、ココアやチョコレートなど普段から口にしている飲料や食品に含まれている身近な成分です。
しかし、カフェインは過剰摂取による健康被害や、妊娠中の摂取による胎児への影響も懸念されているため注意が必要です。
本記事では、妊娠中にカフェインを控えるべき理由について詳しく解説します。
カフェインを摂取する際の注意点や、妊娠中におすすめのノンカフェイン飲料も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
妊娠中のカフェイン摂取がダメな3つの理由
まずは、妊娠中のカフェイン摂取がダメな3つの理由について解説します。
胎児の成長を阻害する
妊娠中にカフェインを摂取すると、胎児の成長を阻害するリスクがあります。
妊娠中はさまざまな栄養素が母体から胎児へと流れていきます。
母親が摂取したカフェインも胎児へと運ばれますが、組織の機能が万全ではない胎児はカフェインを代謝するまでに長い時間を要します。
胎児のもとで長時間カフェインがとどまるため、代謝が完了するまで羊水の中で高濃度のカフェインにさらされます。
そのため、カフェインの過剰摂取は胎児の発育不全をはじめ、血管収縮や心拍数増加などあらゆるリスクが懸念されています。
ただし、一般的な利用量でのカフェインであれば、母体や胎児への影響は少ないと考えられているため、あくまでも過剰摂取に注意しつつ生活を送ることが大切だといえるでしょう。
貧血になるリスクが高まる
カフェインは、妊娠中に貧血が起こるリスクを高めるため注意が必要です。
カフェインには血管の収縮や拡張作用があります。
カフェインにより血管が収縮されると、血のめぐりが悪くなり、貧血リスクが高まります。
また、カフェインを多く含むコーヒーや緑茶、紅茶などにはタンニンと呼ばれる成分も含まれています。
タンニンは鉄と結びつきやすい性質を有しているため、鉄の吸収を阻害する場合があります。
女性はもともと貧血になりやすい体質ではありますが、妊娠中は胎児へさまざまな栄養を届けるためにも、従来よりも多くの血液が必要な状態です。
そのため、妊娠中の貧血を未然に防ぐためにもカフェインの摂りすぎやタンニンを含む飲み物の飲み過ぎには注意しましょう。
妊娠中におけるストレス・体調不良の原因
カフェインの摂取は、妊娠中のストレスや体調不良の原因にもなり得ます。
カフェインを摂取すると中枢神経が刺激され、心身の不調が引き起こされるケースもあります。
就寝前にコーヒーを飲むと寝つきが悪くなりますが、不眠の症状もカフェインの摂取が原因で引き起こされています。
そのほか、めまいや動悸をはじめ、精神的な興奮や不安などさまざまな症状があらわれる可能性があるため注意が必要です。
妊娠中のストレスや体調不良が妊娠によるホルモンバランスの乱れからくるものではなく、カフェインの摂取により引き起こされている場合もあるため注意しておきましょう。
妊娠中に控えるべきカフェインを含む飲み物
ここからは、妊娠中に控えるべきカフェインを含む飲み物について詳しく解説します。
妊娠中に飲み物を選ぶ際には、ぜひ参考にしてみてください。
コーヒー
カフェインが含まれる飲み物といえば、コーヒーを一番に思い浮かべる方も多いでしょう。
コーヒーはコーヒー豆を焙煎し、粉末状にしたものから作られる飲み物です。
カフェインが多く含まれていることから、目覚めをスッキリさせたい朝や、仕事や勉強などに集中したい場合にもよく飲まれている嗜好品です。
コーヒーは一杯あたり、約60mgから80mgのカフェインが含まれています。
飲み物の中でもカフェイン含有量が多いため、飲み過ぎには注意が必要です。
一日あたり2杯から3杯程度に控えておきましょう。
緑茶類
意外に思う方も多いかもしれませんが、実はカフェインは緑茶類にも含まれています。
日本人に馴染み深い緑茶は、茶葉を加熱処理して湯を注ぎ、抽出した飲み物です。
緑茶類には、煎茶、ほうじ茶、抹茶などさまざまな種類のお茶が含まれています。
お茶の種類により、それぞれカフェイン含有量は異なります。
煎茶、ほうじ茶、抹茶、烏龍茶、玄米茶はコーヒーよりもカフェイン含有量が少ない傾向にあります。
ただし、玉露は緑茶類のなかでもカフェイン含有量が最も高く、コーヒーのカフェイン含有量をも上回ります。
そのため、お茶であるからと軽く考えず、飲み過ぎには十分注意しておきましょう。
緑茶類のカフェイン含有量の目安を次の表にまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
茶の種類 | 茶の概要 | カフェイン含有量の目安 (100mlあたり) |
煎茶 | 乾燥させて粉末にした茶葉を湯に浸して成分を抽出したお茶 | 20mg |
ほうじ茶 | 赤茶色に変わるまで強火で焙じた茶葉を湯に浸して成分を抽出したお茶 | 20mg |
抹茶 | 緑茶の葉を細かく砕いた粉末を少量の湯に溶かして練ったお茶 | 60mg |
烏龍茶 | 発酵途中で加熱した半発酵茶葉を湯に浸して成分を抽出したお茶 | 20mg |
玄米茶 | 加熱した茶葉と炒った米を同量混ぜたものを湯に浸して成分を抽出したお茶 | 10mg |
玉露 | 布などで一定期間覆い栽培された茶葉を湯に浸して成分を抽出したお茶 | 160mg |
紅茶
紅茶もカフェインが含まれる飲み物のひとつです。
紅茶は発酵させて乾燥した茶葉にお湯を注いで抽出した飲み物で、アッサムやダージリン、アールグレイなどのさまざまな種類があります。
パンやミルクなどとの相性もよいため、朝食や軽食にあわせて嗜まれることの多い飲み物でもあります。
紅茶は一杯あたり、約30mgのカフェインが含まれています。
カフェイン含有量はコーヒーよりは少ないものの、煎茶よりは少し多めであるため、紅茶についても飲み過ぎに注意しましょう。
コーラ
コーラもカフェインが含まれる飲み物として有名です。
コーラはコーラナッツと呼ばれるコーラの実から抽出してつくられていた経緯があり、現在ではコーラの実のかわりに香料や調味料が用いられています。
また、コーラの実にはカフェインが含まれていたため、当初の名残であえてカフェインが添加されて販売されている製品が大半です。
コーラは一缶350mlあたり、約30mgのカフェインが含まれています。
製品によりカフェイン含有量も異なるため、過剰摂取にならないよう成分表示をチェックしてから飲むとよいでしょう。
ココア
意外に思う方もいるかもしれませんが、ココアにもカフェインが含まれています。
ココアはカカオ豆を原料として作られたココアパウダーを溶かした飲み物です。
ココアをはじめチョコレートにも利用されるカカオ豆にはカフェインが含まれています。
ピュアココアと呼ばれる純ココアの場合、一杯あたり約10mgのカフェインが含まれています。
カフェイン含有量はコーヒーやお茶と比較しても少ないものの、飲み過ぎには注意しましょう。
エナジードリンク
カフェインが含まれる飲み物といえば、コーヒーと同様にエナジードリンクを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
エナジードリンクは非常に多くのカフェインを含む飲み物として知られています。
カフェインには眠気を覚ましたり集中力を上げたりするため、カフェインの性能を利用して作られた飲み物がエナジードリンクです。
エナジードリンクは一杯あたり、約30mgから300mgのカフェインが含まれています。
製品によりカフェイン含有量や内容量は異なりますが、非常に多くのカフェインを含む点はどの製品にも共通しています。
そのため、エナジードリンクを飲む場合には成分表示でカフェイン含有量を確認しておきましょう。
妊娠中でもノンカフェイン飲料なら飲める!
妊娠中はカフェインの制限により、普段からよく飲んでいたコーヒーや紅茶を気兼ねなく飲むことが難しくなります。
しかし、妊娠中でも飲めるものがノンカフェイン飲料です。
緑茶や紅茶などはカフェインが多く含まれていますが、同じお茶でもカフェインが全く含まれないものもあります。
ここからは、妊娠中でも飲めるノンカフェイン飲料をいくつか紹介します。
妊娠中に飲み物を選ぶ際には、ぜひ参考にしてみてください。
麦茶
麦茶は大麦を原料として作られた、カフェインを含まない飲み物です。
麦の香ばしさがありながらもスッキリと飲めるため、妊娠中にも飲用が推奨されています。
麦茶はノンカフェインであるのみならず、カルシウムやカリウムなどのミネラルも豊富に含まれています。
汗をかきがちな夏場はとくに体からミネラルが失われやすいため、水分とともにミネラルを補給可能な麦茶を上手に利用してみましょう。
ただし、大麦には体温を下げる作用があるため、冷えた麦茶を飲みすぎると体が冷えやすくなるため注意が必要です。
なるべく常温の麦茶を一気にではなく数回に分けて飲みましょう。
そば茶
そば茶はそばの実を原料として作られた、ノンカフェインの飲み物です。
そばの独特な香りと風味が特徴的なお茶でありながら、ポリフェノールの一種であるルチンを含んでいます。
ルチンは抗酸化作用を持つため、肌にうれしいビタミンCの吸収促進効果や血圧や冷え性の改善効果にも期待が持てます。
そば茶はノンカフェインで妊娠中にも安心して飲める健康的な飲み物ですが、そばアレルギーの方は飲用を避けましょう。
黒豆茶
黒豆茶は黒大豆を原料として作られた、香ばしさのあるノンカフェイン飲料です。
黒大豆にはポリフェノールが含まれており、冷えやむくみにも効果的であるため妊娠中の飲用が推奨されています。
また、妊娠中はホルモンの影響により便秘になりやすい傾向がありますが、黒豆茶に含まれる食物繊維により便秘解消効果も望めます。
ただし、黒豆茶は飲み過ぎに注意が必要です。
黒豆茶に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモン様の働きを示すことが判明しています。
そのため、大豆イソフラボンを過剰摂取すると胎児の生殖機能へ影響を与えると考えられています。
黒豆茶を飲む際には、一日3杯程度にとどめておきましょう。
ルイボスティー
ルイボスティーは南アフリカ共和国でのみ採取可能なルイボスと呼ばれる植物を原料として作られた、ノンカフェインのお茶です。
ルイボスティーの特徴は、鮮やかな朱色と紅茶にも似た風味豊かな味と香りです。
ルイボスティーにはポリフェノールやミネラルが豊富に含まれており、むくみや便秘の改善や心身のリラックス効果などにも期待が持てます。
ただし、ポリフェノールを多く含むルイボスティーは飲み過ぎに注意が必要です。
とくに妊娠後期にポリフェノールを過剰摂取すると、胎児の血管状態に異常を引き起こす動脈管早期収縮を引き起こすリスクを高めます。
ポリフェノールを含む食品や飲料はルイボスティーのほかにも多数存在するため、一日の総摂取量に注意しつつうまく活用しましょう。
妊娠中にカフェインを摂取する場合に気をつける点
ここでは、妊娠中にカフェインを摂取する場合に気をつける点を三つ紹介します。
摂取量を1日300mgまでにとどめる
妊娠中の場合、カフェインの摂取量は1日300mgまでにとどめておきましょう。
過剰摂取による健康被害が懸念されているカフェインについて、世界保健機関(WHO)はコーヒーの場合、一日あたり3杯か4杯にするよう推奨しています(参照元:厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A)。
コーヒーは一杯あたり約60mgから80mgのカフェインが含まれているため、一日あたりのカフェイン摂取量は240mg〜320mgまでにとどめておくことが妥当だと考えられます。
寝る前はカフェインの摂取を避ける
妊娠中、就寝前のカフェイン摂取は避けておきましょう。
カフェインを摂取すると約30分から2時間で血中のカフェイン濃度が最大になります。
血中のカフェイン濃度を薄めるためには最大8時間かかるほか、妊娠中はカフェイン代謝が低下しているため体内に留まりやすくなることも判明しています。
そのため、就寝前にカフェインを摂取すると寝つきが悪くなるほか、利尿作用で夜中に目が覚めたり眠りが浅くなったりと質のよい睡眠が得られなくなるリスクを高めます。
妊娠中はホルモンバランスの変化により体調不良が生じるため、カフェインを摂取していない状態でもぐっすりと眠れないケースもあるでしょう。
妊娠中の快適な睡眠のためにも、カフェインの多い飲み物は就寝の8時間前までに飲むことをおすすめします。
妊娠中にカフェインを摂取した場合は多量の水を摂取する
妊娠中にカフェインを摂取した場合、多量の水を摂取すると濃度を下げられます。
カフェインには利尿作用がありますが、水を飲むことで利尿作用がさらに促進されるため、カフェインを尿に混ぜた状態で排出できます。
ただし、冷たい水を一気に飲むと体が冷えて胃腸にも負担がかかるため、なるべく常温の水を小分けに飲むことをおすすめします。
カフェイン以外に控えるべき飲み物
ここでは、カフェイン以外に控えるべき飲み物について解説します。
アルコール飲料
妊娠中は、アルコール飲料は控えておきましょう。
妊娠中にアルコールを摂取すると、胎盤を通じて胎児の血液中に溶け込みます。
アルコールは胎児の低体重や奇形、脳障害などさまざまな悪影響を与えるほか、早産や流産の原因にもなるため十分に注意しておきましょう。
また、ノンアルコール飲料は、アルコール度数が1%未満の飲料を指しているため、アルコールが微量ながら含まれている製品もあります。
そのため、妊娠中はアルコール飲料およびノンアルコール飲料全般を避けておいたほうがよいでしょう。
糖分を多量に含む飲み物
妊娠中は、糖分を多量に含む飲み物にも注意が必要です。
妊娠中はつわりの影響により、スッキリした飲み口のジュースや炭酸飲料を好んで飲みたくなるケースがあります。
市販されているジュースや炭酸飲料などには非常に多くの糖分が含まれているため、体重増加や糖尿病につながる可能性があります。
また、糖分の多い飲み物を飲むと体内では糖分濃度を薄めようとする作用がはたらくため喉が渇きやすくなり、さらにジュースが飲みたくなる悪循環にも陥ります。
そのため、妊娠中はなるべく糖分の少ない、麦茶やそば茶などのノンカフェイン飲料を上手に活用しましょう。
妊娠中のカフェインに関するよくある質問
ここでは、妊娠中のカフェインに関するよくある質問について項目ごとに解説します。
カフェインを過剰摂取した場合にどのような症状が起こる?
カフェインを過剰摂取した場合、めまいや動悸をはじめ、精神的な興奮や不安などさまざまな症状があらわれる可能性があります。
カフェインは一時的に心拍数と血圧を上昇させるはたらきがあるため、心臓病の方は摂取自体を注意する必要があります。
また、体質により少量のカフェインでも気分が悪くなる場合もあるため、カフェインを含む食品や飲み物を摂取する際には注意しておきましょう。
カフェイン摂取後に体調不良が現れた場合、なるべく早めの医療機関の受診をおすすめします。
ハーブティーなら飲んでも大丈夫?
ハーブティーはノンカフェイン飲料のため、妊娠中の飲用を考える方もいるでしょう。
しかし、ハーブティーには妊娠中の摂取が推奨できない禁忌ハーブが含まれている場合があります。
ハーブティーに含まれるジャスミンやシナモン、リコリスやハトムギなどには子宮を収縮させる作用があるため注意が必要です。
一部のハーブは妊娠中の摂取が禁止されているものもあるため、ハーブティーを飲む前には必ずかかりつけの産婦人科で飲用の可否を確認したうえで購入しましょう。
まとめ
妊娠中のカフェイン摂取は、胎児の発育不全をはじめ、血管収縮や心拍数増加などあらゆるリスクが懸念されています。
また、カフェインの血管収縮作用により妊娠中の貧血リスクを高めるため注意が必要です。
妊娠中には、コーヒーや緑茶類、紅茶などのカフェインが含まれる飲料を飲みすぎないようにしましょう。
妊娠中にはカフェインが含まれていない麦茶やそば茶、黒豆茶、ルイボスティーがおすすめです。
ノンカフェイン飲料をうまく活用しながら、新しい好みの飲料を見つけてもよいでしょう。
また、カフェインのみならずアルコール飲料や糖分の多い飲み物を摂取しすぎないよう心がけてください。
妊娠中にどうしてもカフェイン入りの飲み物を飲みたい場合には、一日の摂取量を300mgまでにとどめておくことも大切です。
妊娠中はつわりにより好みの食べ物や飲みたいものを口にできないストレスもあるでしょう。
妊娠中のストレスを軽減するためにも、摂取可能なカフェイン量を守り、適量を嗜むようにしてみてください。