妊娠中は、体重の増加によりバランスが崩れることで転倒しやすくなります。
そのため、妊娠中に転んだときの赤ちゃんへの影響や対処法について、気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では妊娠中に転んだときの対処法や、母体や赤ちゃんへの影響について解説します。また、妊娠中に転ばないための対策も紹介します。
本記事を読めば、妊娠中に転んだときの正しい対処法を理解し、万が一転倒した場合でも、慌てず落ち着いて対処できるようになるでしょう。
妊娠中に転んだときの対処法

妊娠中は、体重が増えたりバランス感覚が悪くなったりして、転倒しやすくなります。
もし転んだ場合、赤ちゃんへの影響が心配になりますが。転倒してしまったとき、どのように対処すればよいのか解説します。
かかりつけの病院に行く
赤ちゃんにどのような影響がでているか、自身で判断するのは難しいでしょう。
妊娠中に転んだ場合は、かかりつけの病院を受診し、母体や赤ちゃんへの影響を確認してもらいましょう。
転倒により、胎児が直接ぶつかったり、お腹に強い衝撃が加わったりした場合は、胎児に何らかの影響がでる可能性があります。
早期に必要な処置を施すことで、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えられます。
また、受診して結果的に問題がない場合でも、安心感を得られます。
出血や下腹部の痛みを確認する
妊娠中に転んでしまい、出血や下腹部の痛みがある場合は、赤ちゃんへの影響がないか注意が必要です。
出血や下腹部の痛みが続く場合は、主に次の原因が考えられます。
- 子宮内出血
転倒により子宮内膜が損傷し、出血する場合があります。出血の量が多くなったり、痛みが強かったりする場合、早産などの合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
- 切迫流産
切迫流産とは、妊娠22週未満の流産のリスクが通常より高い状態を指します。転倒や強い衝撃は、子宮に影響を及ぼし、切迫流産の兆候として出血や下腹部の痛み、下腹部の張りなどの症状があらわれます。
これら以外にも、出血や腹部の痛みの原因となる症状はいくつかあります。
正しい診断を受けるため、妊娠中に転倒し、出血や下腹部の痛みがある場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。
お腹の張りを確認する
妊娠中に転倒したあとに、お腹が引きつるような張りがある場合は、子宮収縮の可能性があります。
転倒のショックで、子宮が収縮してお腹が張ることがあります。子宮収縮が頻繁に起こったり、痛みや出血を伴ったりする場合は、早産のリスクが高まるため、注意が必要です。
お腹を触り、張りがあるか確認しましょう。歩くときや起立時にお腹の張りを感じる場合は、病院を受診しましょう。
胎動を確認する(妊娠後期)
妊娠後期に転んだ場合「胎動カウント」をおこない、胎動を確認しましょう。胎動は、赤ちゃんが元気なのかを知る重要な指標です。
胎動カウントは、赤ちゃんの動きを10回感じるのにかかる時間を計測します。カウント方法は、次のとおりです。
- 静かな場所でリラックスした状態でおこなう
- 毎日同じ時間帯にカウントする
- 最初に胎動を感じたら1回目とする
- 10回胎動を感じたらカウントを終了する
胎動カウントは、20分~30分以内に10回胎動を感じる場合が正常値とされています。
転倒の影響で赤ちゃんに何らかの異常が起こると、胎動が減少したり、胎動を感じなくなったりする場合があります。
長時間胎動を感じられない場合や、10回の胎動カウントにかかる時間がいつもより長い場合は、産婦人科を受診しましょう。
胎動カウントでは、胎動が「いつもと違った動き」であるかの確認が大切です。
そのためには、胎動が感じられるようになる、妊娠29週目頃から毎日記録しておくとよいでしょう。
妊娠中に転んだ際の母体や赤ちゃんへの影響

妊娠中の転倒により強い衝撃を受けた場合、母体や赤ちゃんへ大きな影響を与える可能性があります。
妊娠中に転倒した場合、母体や赤ちゃんにどのような影響があるのかを事前に把握し、転倒のリスク回避に努めましょう。
常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離とは、妊娠20週以降に胎盤が子宮壁から剥がれてしまう病気です。転倒は、常位胎盤早期剥離が起こる原因の一つになります。
胎盤は、母体から赤ちゃんに酸素や栄養を供給する役割を担います。
胎盤が剥がれると、赤ちゃんへの栄養や酸素の供給が停止してしまい、合併症や死亡のリスクなど重篤な影響を引き起こします。
常位胎盤早期剥離を疑う母体の症状は、次が挙げられます。
- 下腹部や腰の痛み
- 大量の出血
- 胎動が感じられない
大量の出血や子宮収縮が起こると、母体にも命の危険が及びます。
転倒の程度が軽くても、常位胎盤早期剥離が起こる可能性があります。疑わしい場合は、すみやかに病院を受診しましょう。
骨折や打撲
妊娠中の転倒により、母体が骨折や打撲などの怪我をすると、赤ちゃんにも次のような影響を与える可能性があります。
- 早産のリスク
- ストレスによる胎児発育不全
転倒や怪我が重度である場合、子宮収縮を引き起こす可能性があり、早産のリスクが増加します。
また、妊娠中の怪我により母体がストレスを抱えることは、胎児にも影響を及ぼすことが報告されています。
母体がストレスを感じると「コルチゾール」と呼ばれるホルモンが分泌されます。
過剰に増加したコルチゾールは、胎盤を介して胎児にも伝わり、胎児の成長や発達に影響を与える可能性があるとされています。
妊娠中に転んだ経験がある方が多い理由

妊娠中は、気を付けていても転倒しやすくなります。そのため、妊娠中に転んだ経験がある方も多いのではないでしょうか。
ここからは、妊娠中に転んだ経験のある方が多い理由について解説します。妊娠中の転倒を予防するために、ぜひ参考にしてください。
貧血やめまい
妊娠中は、貧血やめまいによる転倒が起こりやすくなります。
貧血になる原因として、妊娠中における母体の血液量の増加があります。母体の血液量は、赤ちゃんの胎盤や羊水などに血液を送るために、妊娠前より約50%増加します。
しかし、血液の量が増えても血液中の赤血球の数は増えないため、妊娠中は貧血になりやすい傾向があります。
また、妊娠中はプロゲステロンやエストロゲンなどのホルモンの分泌量が増加します。これらのホルモンは、血管を拡張させる作用があるため、めまいを起こしやすくなります。
貧血になると、めまいや立ちくらみなどを引き起こし、転倒するリスクが高まります。
お腹が大きくなり足元が見えない
妊娠中は、お腹が大きくなることで、重心が変化しバランスを崩しやすくなります。
また、お腹が大きくなることで、足元が見えにくくなり、障害物に気が付かずに転倒のリスクが高まります。
階段や人混みなどの外的要因
階段や人混みなどの外的要因も、妊娠中の転倒のリスクを高めます。
階段や段差は、とくに転倒しやすい場所です。妊娠中は、バランスが崩れやすく、足元が見えにくくなるため、階段や段差で転倒するリスクが高まります。
また、人混みでは自身のペースで歩けないため、足がもつれやすく転倒しやすくなります。
妊娠中は、階段や段差では手すりにつかまる、人混みのある場所にはでかけないなどの対策を取り、転倒の予防が重要です。
妊娠中に転ばないための対策

赤ちゃんに重大な影響を及ぼしかねない転倒を避けるためには、どのように対策すればよいのでしょうか。
ここからは、妊娠中に転ばないための対策を5つ紹介します。
歩きやすい靴を履く
妊娠中に転ばないための対策として、歩きやすい靴を履きましょう。歩きやすい靴を選ぶことで、転倒のリスクを軽減できます。
妊娠中において歩きやすい靴とは、次の条件を満たす靴です。
- かかとが安定した靴
- ソールが滑りにくい靴
- 足幅が広めでゆったりとした靴
かかとが安定した靴は、歩行時のバランスを保ちやすくします。ソールが滑りにくい靴は、滑りやすい床でも歩きやすく、転倒のリスクを軽減できます。
妊娠中はむくみやすいため、足幅が広めでゆったりとした靴選びも大切です。足が圧迫されにくく、快適に歩けるでしょう。
また、妊娠中は、足のサイズが変化する可能性があります。定期的に靴のサイズを確認して、足のサイズにあう靴を履くようにしましょう。
何事も落ち着いて過ごす
転倒しないためには、慌てずに何事も落ち着いて過ごすことが大切です。
急な動きや方向転換を避け、落ち着いてゆっくり行動すると転倒のリスクを軽減できるでしょう。
具体的には、次の点に注意しましょう。
- 時間に余裕を持ち行動する
- 急いで歩いたり走ったりしない
- ストレスを溜めないようにする
常に時間に余裕を持つことで、急いで歩いたり、走ったりする場面を回避しましょう。
また、妊娠中は、ホルモンバランスの変化により、イライラや不安などの感情がコントロールしにくくなることがあります。
ストレスによるイライラが募ると、周囲の状況を冷静に判断できなくなる傾向があるため、心の安定にも努めましょう。
動きやすい服装にする
妊娠中は動きやすい服装を着用し、転倒を防止しましょう。
妊娠中は、お腹が大きくなることで、バランスが崩れやすくなります。バランスが崩れたときに動きが制限される服装では、転倒の回避が難しくなります。
具体的には、次の点に注意しましょう。
- ウエストが締め付けられない服装にする
- スカートやワンピースは歩きやすい長さにする
- ヒールの高い靴は避ける
ウエストが締まった服装は、体の動きが制限され、バランスが取りにくくなります。そのため、転倒のリスクが高まります。
スカートやワンピースは丈が長すぎると、引っかけてしまい転倒するリスクが増えます。とくにロング丈を着る場合は、階段や段差で踏み付けて転倒しないよう、裾を持ちながら歩きましょう。
ヒールの高い靴での歩行は、体重のバランスを前に傾ける傾向があります。妊娠中の体重増加とあわせて安定性に欠けるため、ヒールの高い靴は避けましょう。
自転車やバイクには乗らない
妊娠中は自転車やバイクに乗らないようにしましょう。
ホルモンバランスの変化により、運転中にめまいや立ちくらみなどの症状がでる危険性もあります。
また、骨が弱くなるため、転倒した場合の衝撃が大きくなり、重傷を負う可能性があります。
妊娠中は、自転車やバイクの運転を控え、母体と赤ちゃんの安全を守りましょう。
風呂場や階段にはとくに注意する
転倒しやすい風呂場や階段では、とくに注意が必要です。
風呂場は床が滑りやすいため、ふらついて転倒しやすい場所です。風呂場に入る、浴槽をまたぐなど、意識してゆっくりおこないましょう。
風呂場では次の対策をおこない、必要があればすぐにサポートを求めましょう。
- 滑り止めマットを敷く
- 照明を適切な明るさにする
- 手すりにつかまる
- スマートフォンを近くに置き助けを求められるようにする
また、階段も段差があるため転倒しやすい場所です。妊娠中は、次の点に注意しましょう。
- ゆっくりと昇降する
- 手すりを持つ
- 荷物は少なくする
- 人混みは避ける
妊娠中は、妊娠周期にかかわらず、風呂場や階段での転倒に最大限の注意を払いましょう。
まとめ

本記事では、妊娠中に転んだときの対処法について、赤ちゃんへの影響や症状もあわせて解説しました。
妊娠中に転倒すると、出血や流産などのリスクが高まる可能性もあり、不安になる方も多いでしょう。
本記事で紹介した対処法を参考に、万が一転倒した場合は、慌てず落ち着いて対処しましょう。
また、妊娠中の転倒を予防するために、ゆっくりとした動作を心がけ、十分な睡眠と休息を取り貧血を予防しましょう。
妊娠中の転倒は、決して珍しいことではありません。万が一転倒してしまった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。