クアトロテストとは?新型出生前診断との違いについて知っておこう!
クアトロテストとは?新型出生前診断との違いについて知っておこう!
クアトロテスト(母体血清マーカー検査)とは、母親の血液を測定して、赤ちゃんが「ダウン症候群」「18トリソミー」「開放性神経管奇形」である確率を調べるスクリーニング検査です。今回は「クアトロテストとは」「結果をどのように解釈したらいいのか」や、「新型出生前診断との違い」について解説します。
目次
クアトロテストとは?
クアトロテストは「母体血清マーカー検査」とも呼ばれます。母親の血液を調べ、赤ちゃんや赤ちゃんと一緒に成長する「胎盤」から出てくる4つの成分を測定し、赤ちゃんに特定の疾患がある確率を算出する非侵襲的なスクリーニング検査です。
非侵襲的検査とは?
「身体を傷つけない・傷みを与えない」という意味の検査です。クアトロテストでは血液(少量)を採取しておこなうため、妊婦さんへの影響は少ないです。
スクリーニングとは?
医学的なスクリーニングとは、「疾患の発症が予測される対象者(ここでは、疾患を持つ可能性がある赤ちゃん)」を選別することを指します。「スクリーニング陽性」とされた場合、「赤ちゃんが対象疾患である確率は基準値(カットオフ値と呼ばれます)より高いが、必ず対象疾患に罹患しているわけではない」という意味になります。「スクリーニング陰性」は「対象疾患である確率は基準値より低いが、絶対に対象疾患に罹患していないというわけではない」という意味です。クアトロテストはスクリーニング検査に分類されます。
クアトロテストは確定診断ではない
さきほど説明した内容からもわかるように、クアトロテストでは「赤ちゃんに特定の疾患があるかどうか」を確定できません。偽陰性率(実際には疾患があるのに、スクリーニング陰性と判断される確率)は0.03%と低めですが、偽陽性率(実際には疾患がないのに、スクリーニング陽性と判断される確率)は高いです。「陽性と診断されたうちの2%のみが実際に陽性だった」という調査結果があります。そのため「羊水染色体分析」や「画像診断」など、より正確な情報を得るための検査をするかどうかの判断材料として使われます。
クアトロテストによってわかることと具体的な検査内容
クアトロテストの実施方法とクアトロテストによってわかることについて説明します。
結果からわかること
赤ちゃんに特定の疾患がある確率がわかります。対象疾患は以下の3つです。
疾患 | 症状 |
---|---|
ダウン症候群 | 染色体の変化が原因で起こる。一般的に発達の遅れがあり、心疾患や聴覚障害などの合併症が起こることもある。 |
18トリソミー | 染色体の変化が原因で起こる。一般的に発達の遅れがあり、心疾患などの合併症が起こることもある。 |
開放性神経管奇形 | 無脳症や二分脊椎など。赤ちゃんの神経管が正しくつくられず、脊髄や脳に異常が起きる症状。 |
※ただし赤ちゃんが双子の場合、18トリソミー(エドワーズ症候群)の検査はできません。
※NIPT(新型出生前診断)では双子の場合でも18トリソミー(エドワーズ症候群)の検査は行えます。
「確率がわかる」ってどういうこと?
例えばダウン症候群の確率が「1/500」だったとします。これは「同じ結果(1/500)がでた母親が500人いた場合に、その中の1人が、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠している可能性がある」ということを意味します。
具体的な検査方法
クアトロテストは「血液検査の結果」と「母親の年齢や妊娠週数」をもとに行います。血液検査では、母親の血液を採取して以下の4つの成分を測定します。
・AFP
・hCG
・uE3(非抱合型E3)
・Inhibin A(インヒビンA)
測定結果に「母親の年齢」「妊娠週数」「日本人の基準値」などを加味して、赤ちゃんの対象疾患の確率を算出しています。年齢を加味するため、血液検査の結果が同じでも、年齢によって算出される確率は違います。具体的には、母親の年齢が高いほど確率も高くなる傾向があり、とくに40歳以上の人だと「陽性」が出やすいです。
検査できる期間
クアトロテストは15~21週まで検査できます。ただしクアトロテストのあとで羊水検査をうける可能性を考慮して、妊娠15~17週までに検査を受けることが推奨されています。妊娠15週未満では受けられません。検査結果は1週間~10日ほどでわかります。 クアトロ検査を受けてから羊水検査を受ける場合非常に短い期間のうちに受けられる医療機関の選定や検査の予約などを行う必要があります。
一方NIPT(新型出生前診断)は妊娠週数9週目~32週目まで幅広く検査を行うことが出来ます。場合によってはクアトロ検査ではなくNIPTを検討した方が余裕のある判断が可能になることがあります。
17週以降でクアトロテストを実施した場合でも、クアトロテストの結果を得られますが、陽性の場合の羊水検査が出来ず、また羊水検査が出来たとしても結果の通知のタイミングによっては、 結果を得てから、妊娠継続の可否をすることが出来ないことがあります。
新型出生前診断との違いは?
超音波マーカー検査(NTスクリーニング)、絨毛検査、羊水検査など、クアトロテストのほかにもいくつかの出生前検査があります。なかでもクアトロテストと同じ非侵襲的な血液検査である「新型出生前診断(NIPT)」について気になっている人が多いのではないでしょうか。ここでは、クアトロテストと新型出生前診断の主な違いについて解説します。
わかることの違い
クアトロテストと新型出生前診断は、検査対象疾患が違います。表にまとめました。
検査種別 | 検査対象疾患 |
---|---|
クアトロテスト | ダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管欠損症 |
新型出生前診断 | ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーなど(検査施設によっては全染色体検査+微小欠失検査も可能) |
一般的な新型出生前診断(日本医学会による認証を受けている施設での検査)では、3大トリソミーと言われる疾患、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーについて検査できます。日本医学会による認証を受けていない施設では、3つの疾患以外の疾患(ディジョージ症候群、1p36欠失症候群、ウルフ・ヒルシュホーン症候群など)や、全染色体検査、性染色体の検査、希望者のみ性別の通知など、様々な疾患を調べることができます。
検査方法の違い
クアトロテストも新型出生前診断も血液検査です。調べる成分が以下のように違います。
検査種別 | 検査方法 |
---|---|
クアトロテスト | AFP、hCG、uE3、Inhibin A |
新型出生前診断 | 赤ちゃんのDNA断片 |
検査精度の違い
クアトロテストと新型出生前診断は検査精度が違います。ダウン症候群を例に比較してみます。
検査種別 | 検査精度 |
---|---|
クアトロテスト | 感度:81%程度 陰性的中率:算出された値による |
新型出生前診断 | 感度:99%程度 陰性的中率:>99% |
上記のように感度に関して大きな違いがあります。感度81%というのは疾患があった場合に81%の確率で陽性として検出することができるが19%の確率で疾患を見逃してしまうことを意味します。
検査時期の違い
検査できる時期も違います。
検査種別 | 検査時期 |
---|---|
クアトロテスト | 妊娠15~17週(推奨)※15週未満は不可 |
新型出生前診断 | ①大学病院等 妊娠10週目~ ②認証外施設 妊娠9週目~ ※検査施設によっては妊娠6週目~検査可能 |
検査費用の違い
検査費用も異なります。検査を実施する施設によって金額がかわるのですが、目安としては以下のようになっています。
検査種別 | 検査料金 |
---|---|
クアトロテスト | 22,000円(税込)~33,000円(税込)程度 |
新型出生前診断 | 53,900円(税込)~253,000円(税込)前後 ※施設によって大きく異なります |
検査対象になる妊婦さんの違い
日本医学会の指針では、出生前診断を受けるにあたっての指針を定めています。
検査種別 | 検査対象 |
---|---|
クアトロテストなどの出生前診断全般 | ・夫婦のどちらかが、染色体異常の保因者 ・染色体異常症に罹患した赤ちゃんを妊娠・分娩した経験がある ・高齢妊娠 ・赤ちゃんが重い疾患にかかる可能性がある |
新型出生前診断 | 特に制限はありませんが、医療機関によっては下記のような制限を設けている機関もあります ・要件を備えた基幹施設もしくはその連携施設において行う。 ・検査結果が陽性であった場合には、原則として基幹施設において検査後の出生前カウンセリングを行う。 ・地理的要因など、妊婦の置かれたさまざまな状況から基幹施設の受診が困難とみられる場合にのみ、検査結果が陽性であった場合の検査後の出生前カウンセリング を、連携施設において行なうことが許容される。 |
認証外施設ではNIPT(新型出生前診断)を受けるにあたって認証施設と比べ受検をするにあたって、特段、制限はありません。
まとめ
クアトロテストの特徴やNIPT(新型出生前診断)について解説しました。クアトロテストは母体への影響が少ない非侵襲性の血液検査でスクリーニング検査となるため、赤ちゃんに疾患があるかを確定できるわけではありません。「より正確な情報が得られる検査を受けるか」を判断する材料になります。同じようにNIPT(新型出生前診断)も血液検査でスクリーニング検査となりますが、従来の出生前検査と比べ一番精度が高く、なおかつ、早期に検査を受検することが可能です。
検査をうけるのであれば検査の目的・検査でわかること・結果をどう受け止めるか」について理解を深めることが大切です。
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