21トリソミーとは?症状の主な特徴と検査方法の種類について

出生前診断

21トリソミーとは?症状の主な特徴と検査方法の種類について

出生前に胎児に異常がないかどうか、検査を検討している妊婦さんも増えているようです。検査で見つかる異常のひとつ、染色体異常の中で最も多いのが「21トリソミー」で、全体の半数になるといわれています。本記事では21トリソミーとはどのような染色体異常なのか、症状の主な特徴や検査方法の種類について詳しく解説していきます。

21トリソミーとは?


「21トリソミー」という言葉は知らなくても、ダウン症なら聞き覚えがあるという人も多いはずです。21トリソミーとは、染色体異常症のひとつで通常は2本ある21番の染色体が3本あり、この疾患の特徴を最初に発表したイギリスの医師「ジョン・ラングドン・ダウン」の名にちなみ、ダウン症候群(ダウン症)とつけられました。

トリソミーとは?

トリソミーとは、ある染色体が通常よりも1本余分に存在し、合計で3本になっている状態のことを指します。新生児で最も多いトリソミーは、21トリソミー(ダウン症候群)です。

21トリソミーの種類

21トリソミーは、染色体の構造の違いにより、次の3つの種類に分類されます。

・標準型
21トリソミー全体の90~95%が標準型です。標準型は多くの場合両親の染色体は正常なのですが、父親と母親由来の染色体がそれぞれ配偶子を形成する際に、突然変異を起こし不均衡に分離することで21番目の染色体の数が3本になってしまいます。

転座型
21トリソミー全体の5%が転座型で、父と母どちらかの21番染色体の1本が他の染色体にくっついてしまい、一部だけトリソミーになってしまう状態です。転座型の場合は、父と母のどちらかが転座型の染色体を保有しています。

・モザイク型
非常に珍しい型で、正常な染色体を持つ細胞と、21トリソミーの細胞が両方混ざっている状態になります。標準型と同様に、モザイク型も父と母のどちらも染色体は正常である場合がほとんどです。

21トリソミーが発症する確率

21トリソミーは約600~800人にひとりの割合で出生しています。妊娠の時点ではこの2倍程度の確率なのですが、自然流産や胎児死亡が起こりやすいため、実際にはその半数しか生まれていないということになります。21トリソミーは、母親の出産年齢が上がると発症確率も上がり、高齢出産ではダウン症の子どもが生まれるリスクが高くなることが知られています。母親が20歳代前半なら発症率は1/1000ですが、40歳以上になると1/100まで上がってしまいます。

21トリソミーの症状

21トリソミーは、一般的に身体と精神の両方の発達が遅れます。それぞれの発達、特徴について詳しく説明していきます。

21トリソミーの身体的な発達について

21トリソミーの、身体的な特徴や症状について見ていきましょう。

・特徴的な顔立ち
21トリソミーの子どもは、特徴的な顔立ちをしています。顔が広く扁平で、両目が少し離れ気味でややつり上がっており二重瞼、鼻は低く舌が大きめ、耳が頭部下の方に位置しています。このような顔立ちの特徴は、出生時に現れず幼児期に入ると見られることもあります。

・手や指の特徴
手は一般的に短くて幅が広く、手のひらを一直線に横切る1本のしわ(手相でいう「ますかけ線」)が見られることも多いようです。指は短く、第5指の関節が通常は3つのところ、21トリソミーの場合は2つしかないことも多く、内側に曲がっています。また、足趾の第1趾と第2趾の間が広くなっているという特徴もあります。

・体型の特徴
21トリソミーの子どもの場合、しばしば低身長で肥満になるリスクが高くなります。また、首の関節が不安定になり、脊髄が圧迫され歩き方や腕・手の使い方に変化が生じたり、排便や排尿の機能障害や筋力の低下が起こることもあります。

・内臓の異常
21トリソミーの子どもの約半数で、出生時からの心臓の異常がみられます。約5%の子どもに消化管の問題がみられます。

・ヒルシュスプルング病とセリアック病
通常よりもヒルシュスプルング病とセリアック病が多くみられます。ヒルシュスプルング病は大腸に異常が起こり、腸管が正常に収縮せず腸閉塞の症状が起こる病気です。セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるグルテンに対する遺伝性の不耐症で、吸収不良を起こす病気です。

・耳の症状
難聴や耳の感染症を繰り返す傾向があります。

・視覚障害
視覚障害や白内障がみられることがあります。

・白血病
21トリソミーの子どもの場合、通常の10~20倍白血病になりやすいという報告があります。

・甲状腺疾患や糖尿病の発症
21トリソミーの人の多くが、甲状腺機能低下症などの甲状腺疾患や、糖尿病を発症するといわれています。

21トリソミーの精神的な発達について

21トリソミーの、精神的な発達や特徴について説明していきます。

・知能指数
正常な子どもの場合はIQが平均100ですが、21トリソミーの子どもの場合の平均値はおよそ50です。言語面、運動面でも発達の遅れがみられますが、その程度には個人差があります。

・注意欠如/多動性障害
小児期には、注意欠如や多動症を思わせる行動がみられることも多いです。

・自閉的行動やうつ病のリスクが高い
知的障害が重い子どもほど自閉的行動のリスクが高く、うつ病は小児と成人の両方でリスクが高いです。

医療の発達や早期の教育で普通に生活することができる

21トリソミーの場合、体のさまざまな部分が影響を受け合併症の不安もありますが、医療の発達によりほとんどの人が普通の生活を送ることができるようになりました。以前は平均寿命が短くなる先天性疾患とされていたのですが、最近は平均寿命が延び約60歳といわれています。また、運動面や言語面に発達の遅れがある21トリソミーの子どもでも、早期の教育などにより能力を高めることが可能です。21トリソミーの子どもは地域の小中学校の普通学級か特別支援学級、あるいは特別支援学校に通い学ぶことができますし、大半が高校では特別支援学校へ進学しています。卒業後は施設や作業所に就職、個性を生かしさまざまな分野で活躍しています。

21トリソミーの検査にはどんな方法がある?


21トリソミーであるかどうか、検査する方法には大きく分けて「出生前」に検査する方法と、「出生後」に検査する方法の2つがあります。それぞれの検査方法について、詳しく解説していきます。

出生前の検査

出生前は、超音波検査で認められた胎児の異常、妊娠15~16週目の母親の血液検査により特定のタンパクやホルモンの異常値がみられると、21トリソミーが疑われます。具体的な検査は次の通りです。

・形態異常を調べる検査
超音波(エコー)による検査になります。

・染色体異常を調べる検査
診断が確定できない「非確定的検査」として、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)があり、診断が確定できる「確定的検査」として絨毛検査と羊水検査があります。

確定的検査には流産や死産のリスクがある

出生前の確定的検査は、診断を確定することができるのですが、母親のお腹に針を指して羊水や絨毛を採取するため、流産や死産のリスクがあります。このようなリスクのある確定的検査とは違い、非確定的検査は母親からの採血のみで染色体異常を調べるため、そのようなリスクはありません。しかし、従来の母体血清マーカーやコンバインド検査では検査精度が低いため問題がありました。近年は、採血だけでリスクのない検査ではあるものの、母体血清マーカーやコンバインド検査よりも精度が高い「新型出生前診断(NIPT)」が注目され、利用も増えてきています。新型出生前診断(NIPT)により、21トリソミーが疑われた場合は、絨毛採取、羊水穿刺、またはその両方を行って診断を確定することになります。

出生後の検査

出生後の検査は、まず乳児の外見で21トリソミーの特徴が認められるかを診断し、確定するために乳児の血液で検査を行います。診断が確定したら、専門医による診察を受けて、心臓のエコー検査や血液検査などを行い、合併する異常がないか調べます。

まとめ

21トリソミーに対する根本的な治療は残念ながらありませんが、具体的な症状や異常の一部に関しては治療が可能で、以前よりも平均寿命も延びてきています。出産前に21トリソミーであるか胎児の状況を知ることは可能であるため、検査は母体や胎児にリスクがなく精度が高い新型出生前診断(NIPT)がおすすめです。

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