新型出生前診断とは?検査することでわかる疾患についても解説

出生前診断

新型出生前診断とは?検査することでわかる疾患についても解説

新型出生前診断という検査をご存知ですか?新型出生前診断では、母親の血液を分析することで、出生前に赤ちゃんの性別や発症する可能性のある疾患を検査できます。この記事では新型出生前診断の特徴と検査対象疾患、検査を受ける際の注意点を解説していきます。

新型出生前診断とは?

新型出生前診断(NIPT)とは、妊婦さんの血液を採取し分析することで、胎児(赤ちゃん)に特定の先天性異常がないか検査する診断のことです。英語名をnon-invasive prenatal genetic test(無侵襲的出生前遺伝学的検査)といい、頭文字を取ってNIPTとも呼ばれます。そもそも出生前診断とは、妊娠中に胎児の発育や異常の有無などを調べる検査を行い、その検査結果をもとに、医師が行う診断のことをいいます。出生前診断は大別すると、エコー検査が該当する「形態異常の検査」、NIPTや羊水検査が該当する「染色体異常を調べる検査」に分かれます。

出生前診断の目的

出生前診断では、出生前に胎児の状態を観察・検査することができます。この診断の目的は、異常が発見された胎児に治療や投薬を行ったり、また出生後の赤ちゃんの治療の準備をしたりすること、そして母親の健康管理を行うことが目的です。出生前に胎児の状態や疾患等の有無を調べておくことによって、赤ちゃんの適切な分娩方法や養育環境を検討するために、出生前診断が行われているのです。

従来の出生前診断との違い


新型出生前診断(NIPT)は、従来の出生前診断と比較すると「安全性」「検査精度」「利便性」の3つに違いがあります。

安全性

羊水検査、絨毛検査といった従来の出生前診断では、妊婦のお腹に針を刺して採取するため、胎児を傷つけてしまうリスクがあります。NIPT japanによる統計データでは、流産率が羊水検査で約0.3%、絨毛検査で約1%という結果が出ています。新型出生前診断(NIPT)は母親から採取した血液から胎児の染色体情報を取り出し分析します。NIPTの採血は1回の採血で済むほか、従来の検査と異なり、胎児に影響を与える心配がありません。一般的な献血では200ml程度の血液を採取しますが、NIPTにおいて妊娠中の母親から採取する血液量は最大10~20mlです。200mlを採血した場合でも2〜3週間で失った血液は戻ることから、母親への負担は少ないことがわかります。また、NIPTでは血液中に含まれる胎児の染色体を分析するため、先天性の異常だけではなく、性別を判明することも可能です。

検査精度

羊水検査、絨毛検査は確定的検査とも呼ばれ、はっきりと胎児の異常を診断できるのが特徴です。
反対に血液を利用した検査方法は非確定検査と呼ばれ、検査結果が確定しません。もともと血液を利用した出生前診断は流産のリスクこそないものの、検査結果の精度が低いことがデメリットでした。近年は新型出生前診断(NIPT)の技術が進展し、従来の非確定検査と比較すると検査精度は著しく高まっています。検査を実施する施設により精度が異なる場合もありますが、最大で約99%の検査精度を持ちます。

利便性

新型出生前診断(NIPT)は従来の検査方法よりも利便性が高いです。施設によってバラつきはありますが、妊娠10週〜22週まで検査をすることができます。同じように先天異常を検査する羊水検査・絨毛検査の検査可能期間を比較すると、前者が妊娠15週以降、後者が妊娠11週~14週という結果になります。新型出生前診断の方が検査を受けられる期間が長いことがわかります。

新型出生前診断でわかる疾患

新型出生前診断(NIPT)では染色体を分析していくため、遺伝子異常による疾患を発見することができます。ここで注意しなければならないのは、ありとあらゆる疾患を見つけることはできないということです。出生前にダウン症を始めとする胎児の先天性疾患を調べることが出来ます。

染色体とは何か

新型出生前診断(NIPT)でわかる疾患を解説する前に、染色体について少し説明しておきます。人間の体は何兆個もの細胞で構成され、細胞1つ1つには染色体と呼ばれる46本23対の物質が折りたたまれています。この染色体にはDNAや遺伝子といった人間の構成要素が詰まっているのです。23対の染色体のうち、1番から22番目を常染色体、23番目を性染色体といい、NIPTはこの染色体を分析することで胎児の健康状態を検査するのです。また先天異常を語る上で、トリソミーは外せません。染色体は通常2本で1対ですが、染色体が3本ある状態のことをトリソミーといいます。その前提を踏まえた上でNIPTで検査できる疾患を解説していきます。

ダウン症(21トリソミー)

ダウン症とは、21番目の常染色体の異常によって起こる先天異常です。21番目の常染色体が3本あるため21トリソミーとも呼ばれます。ダウン症への根本的な治療はなく、社会的なサポートを利用しながらの療育成が必要です。また心臓や消化器に病気がある場合は、手術等の治療が必要となります。

13トリソミー

13トリソミーは13番目の常染色体が3本あることによって起こる先天異常です。13トリソミーの赤ちゃんへの治療法はありません。生まれた赤ちゃんが1年以上生きられる確率は10%であり、ほとんどの子は生後1か月で亡くなってしまいます。新型出生前診断で赤ちゃんが13トリソミーの可能性が分かったときは、遺伝カウンセリング等の支援を受けるようにしましょう。

18トリソミー

18トリソミーは、18番目の常染色体が3本あることによって起こる先天異常です。18トリソミーに対する治療はなく、半分の赤ちゃんが生後1週間以内に亡くなります。1歳まで生きられる子は10%ですが、その後も障害を抱えながら生きる子もいます。新型出生前診断で赤ちゃんが18トリソミーの可能性が分かったときは、遺伝カウンセリングを受けるようにしましょう。

全染色体全領域部分欠失・重複疾患

NIPTでは、染色体の数の異常ではなく、染色体の一部が重複していたり、欠けていたりする異常も発見することができます。ただダウン症、13トリソミー、18トリソミーの3種の疾患は基本的にどの施設でも検査できますが、全染色体全領域部分欠失・重複疾患においては検査することができる施設が限られます。

新型出生前診断を受ける前に知っておくべき注意点


ここで、新型出生前診断を受ける前の注意点についてお話しします。

形態異常を調べることはできない

新型出生前診断(NIPT)では染色体の異常を調べることはできても、形態異常を調べることはできません。形態異常とは、生物の臓器や個体が正常な形態から著しく外れて見える状態のことです。
赤ちゃんの体や臓器の形状を調べるためにはエコー検査でなければ形態異常を調べることはできないので注意が必要です。

全ての病気を調べることはできない

先ほど4つの例を挙げましたが、NIPTでは基本的にはトリソミー3種の疾患を調べることに適しています。形態異常を調べるのであればエコー診断、神経管閉鎖障害を調べるのであれば母体血清マーカー検査と、調べたい疾患に合わせて診断を組み合わせることも考えておきましょう。

NIPTの検査結果は確定ではない

羊水検査、絨毛検査は確定検査といい、胎児に疾患があるかどうかに「イエス」か「ノー」で結果が出ます。しかし非確定検査に該当する新型出生前診断(NIPT)では、「陽性」「陰性」、もしくは疾患がある可能性が「高い」「低い」という結果が出ます。陽性と結果が出た場合でも100%疾患があるとはいえないのです。そのため検査の結果、疾患がある可能性が高いと言われた場合は、追加の検査を受けるか受けないか考える必要があります。具体的な対策には、追加で確定検査(羊水検査等)を受ける、遺伝カウンセリングを受けるなどがあります。確定検査は母体へのリスクを伴うため、できるだけリスクを小さくする上で事前に新型出生前診断(NIPT)を受けることが望ましいと考えておくと良いでしょう。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事一覧