クラインフェルター症候群とは?主な症状や検査方法について解説!
クラインフェルター症候群とは?主な症状や検査方法について解説!
クラインフェルター症候群という言葉をご存じでしょうか?X染色体異常の中でも特に多くみられる、先天性異常です。
あまり聞きなじみのない方にむけて、ここではクラインフェルター症候群の主な症状や検査方法などを解説しています。
目次
クラインフェルター症候群とは?
クラインフェルター症候群とは、男性には通常1つのはずのX染色体が2つ以上ある先天性異常です。
通常、染色体が「XY」なら男性、「XX」なら女性となりますが、クラインフェルター症候群では男性のX性染色体が1つ多い「XXY」2つ多い「XXXY」のように、余分にXがある状態となります。X染色体異常の病気の中でも多く見られる病気で、産まれてくる赤ちゃんのおよそ500人に1人の割合で起こるとされています。
余分なX染色体の数が増えると、知的障がいや奇形の症状が強く出ますが、症状のあらわれ方には個人差がります。そのため、日常生活に影響がない場合も少なくありません。
クラインフェルター症候群の原因として考えられること
クラインフェルター症候群の原因としては、高齢出産や父親の性染色体がうまく分離できなかったことなどが挙げられます。
クラインフェルター症候群の主な症状
クラインフェルター症候群は、赤ちゃんから子どもの時期には目立つ症状が見受けられないことも多く、わかりづらいです。出生前診断などで子どもの持つ障害を事前に知らない限り、親や身内が気づくことは難しいでしょう。
X染色体が通常よりも多いクラインフェルター症候群の特徴は、男性の睾丸で作られるテストステロンの量が低下します。テストステロンとは、重要な性ホルモンのひとつです。筋肉質な体つきやがっしりした骨格など、男性らしさを作るのがテストステロンの働きです。
思春期に急激に分泌量が増えることにより身体や精神の発達にも大きく関係します。
身体的な症状
クラインフェルター症候群の男の子は、平均よりも背が高くてさらに手と足も長くなる特徴があります。一方で、男性の生殖器官である睾丸のサイズは小さくなるという傾向があります。
睾丸は男性ホルモンであるテストステロンが作られる大切な器官です。テストステロンの量が低くなると、思春期以降の男性らしい発言が弱くなりやすいです。
そのため思春期を迎えた男の子は、精巣が小さくひげや陰毛の量が他の人と比べると少ないのが特徴です。逆に、女性化乳房といった女性のような胸が膨らむような傾向があります。そして多くの場合、男性は精子が作れず、生殖機能も持ちません。
ただ一方で、男性の中でも精巣が発達するケースも見られます。その場合、精巣に精子が作られるため、生殖機能には大きな問題はありません。仮に生殖機能が働かなくても、性行動には全く影響ありません。また、精子が全く作られなくても、勃起や射精をしたりする機能はきちんと働きます。
精神的な症状
クラインフェルター症候群の男の子は、知能は普通か少し低くなりやすい傾向にあります。言葉や行動の能力が他の子と比べると遅く、話をしたり文字を書いたり読んだりすることに時間がかかります。
そのため、学校などのコミュニケーションの場で不安や悩みを抱えてしまうことがあります。自信や活発性があまりなく、受け身で内気な性格になりがちともいわれています。しかしながら、個人差もあるので全員この症状に当てはまるとは限りません。
主になる合併症
クラインフェルター症候群と診断された場合の男性の寿命は、健康な男性とあまり変わりません。ただし、他の男性に比べて、以下の病気にかかりやすいので気をつける必要があります。
<悪性腫瘍>
一般的にがんと言われていますが、何かしらの原因により、異常な細胞が増える病気です。悪性腫瘍の中には、増えるスピードが早く、他の臓器に腫瘍が転移する可能性があるため、命に関わることもあります。
クラインフェルター症候群は悪性腫瘍の発生頻度が非常に高くなりやすいです。悪性腫瘍のリスクが高いとされているのは以下になります。
・乳がん
女性のがんというイメージがある乳がんですが、女性と比べると少ないものの、男性も可能性はあります。乳がんになったことがある近親者が1人以上いる男性は、そうでない男性よりも圧倒的に乳がんになる確率は高いです。原因はX染色体が多いことから、女性ホルモンの量が多くなるからです。
・非ホジキン腫リンパ腫
がん細胞化した血液中に含まれるリンパ球が、時間制限がないため増えていく悪性腫瘍です。リンパ球は体内に入り込んだ異物を取り除く働きがあるため、がん化してしまうと免疫機能が働かなくなってしまいます。悪性腫瘍を引き起こす原因についてははっきり解明されていませんが、X染色体の異常が増えることで体内のホルモンバランスが崩れるためという見解もあるようです。
<骨粗鬆症>
高齢者の方に多くみられる骨粗鬆症ですが、最近は若い方も増えています。骨密度が低く骨が弱くなり、骨折しやすくなります。男性ホルモンのひとつであるテストステロンを材料にエストロゲンが作られるのですが、クラインフェルター症候群の方はエストロゲンの量も少ない傾向にあります。このエストロゲンは骨密度にとって大変重要なものです。
<糖尿病>
血液中の糖分が高くなってしまう病気です。男性ホルモンの分泌と血糖値の数値にはつながりがあることがわかっています。男性ホルモンが減少すると、代謝が異常を起こし肥満になりやすくなるため、血糖値が上がりやすくなります。
クラインフェルター症候群の検査方法とは?
クラインフェルター症候群を、赤ちゃんがおなかの中にいるタイミングで検査する方法として、超音波(エコー)検査、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)といった非確定的検査が挙げられます。
さらに、この非確定的検査をした後、染色体異常の可能性がある場合のみ、確定的検査を受けて本当に異常があるかを見極めます。ここでは非確定的検査をそれぞれ紹介します。
超音波(エコー)検査
人の耳では聞こえないといわれている高い周波数の音波を使った検査です。これは妊婦検診でも使われています。超音波診断装置というもので反射波を利用して、コンピュータ処理で画像化をおこなっています。超音波検査では、胎児の首の後方にむくみのような厚みを調べます。ちなみに、このむくみのような厚みをNTと呼ばれています。
この超音波検査は、画像化することもあって、経験が豊富な医師にみてもらうことでかなりの精度でダウン症の確率を測ることができる優れた検査です。
母体血清マーカー検査
お母さんから採った血液に含まれる物質を調べることで、お腹の赤ちゃんに生まれつき異常がないのかどうか、神経管に異常がないかを調べる検査です。妊娠11週から13週に行えます。
お母さんの血液を採り、赤ちゃんのダウン症候群、エドワーズ症候群、開放性神経管奇形の確率を調べます。
トリソミーと呼ばれる、生まれつき異常がある中でも染色体の数に異常がある病気です。
コンバインド検査
組み合わせ検査ともよび、超音波検査と採血を組み合わせた検査です。検査できる時期は妊娠11~13週となっています。
具体的に赤ちゃんの首の後ろを計測する超音波検査であるNTとお母さんの血液から採る母体血清マーカー計測を組み合わせることで、赤ちゃんのダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群の確率を調べます。
新型出生前診断(NIPT)
妊娠中のお母さんから血液を採り、そこに含まれる胎児のDNAの切れ端を詳しくみることで、染色体や遺伝子に異常があるかどうかを調べる検査です。一般的には妊娠10週以降に行える検査です。
まとめ
クラインフェルター症候群は先天的な染色体異常のひとつです。症状には個人差がありますが、生殖機能が働かなかったり、知能が低い傾向にあるとされています。また、合併症にも注意が必要といえるでしょう。
赤ちゃんがおなかにいる段階で検査をすることが可能なので、心配な方は超音波(エコー)検査、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)といった非確定的検査をまずは受診してみるとよいかもしれません。なお、検査には妊娠週数などの条件があるため、受けたいと考えている場合は必ず専門機関で相談しましょう。
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